主に中小企業経営者向けの死亡定期保険を巡り、生命保険の販売現場で「節税」アピールが過熱し、金融庁が監督を強化している。一部の商品設計は保険の趣旨を逸脱しかねないとみて、各社に繰り返し調査して説明を要求。一部で新商品の発売延期の動きも出ている。
生保過熱「節税保険」、金融庁が問題視 新商品が次々
国税庁の「想定外」 日本生命が生み出した「節税保険」
問題の保険は、経営者らの死亡時に高額の保険金が支払われる定期保険。保険料は条件次第で全額経費扱いにでき、加入者が経営する企業の利益を減らして節税できる。保険期間は数十年だが10年ほどで中途解約すれば高い返戻金が得られ、支払った保険料の多くを取り戻せる。中途解約と役員退職金などの支払時期を合わせれば、返戻金への課税も回避できる。
既存の同種の商品では、国税庁が保険料の一部を経費算入できなくするなどした。しかし昨年4月、日本生命保険が全額経費算入できる商品を発売。各社が追随して、返戻金がより多く得られる商品も登場し、販売現場で「節税」PRが過熱した。
これに対し金融庁は、一部商品では「付加保険料」と呼ばれる営業経費が保険期間の後期に大幅に高くされ、前期も含む保険料全体が引き上げられ、返戻金が多くなっていることを問題視。6月以降、各社へのアンケートなどで保険料の算出根拠を繰り返し問い、追加説明を求めている。
同庁の「厳格化」に波紋が広がり、オリックス生命は来月予定だった経営者向け保険の発売の延期を代理店に通知。代理店への書面で「(金融庁の)調査への対応を継続している」と記載した。同社は「金融庁による対応次第で、いったん販売してしまうと顧客に迷惑をかける可能性がある」(広報)と説明している。(柴田秀並)