17年前、無名の日本人作家が出した児童書が、世界でじわじわと評価を集めている。8カ国・地域で翻訳され、さらに5カ国で出版される予定。10月には、権威があるドイツ児童文学賞を日本の作品で初めて受賞した。移民問題など現代的な課題に重ねて読まれることもあるようだ。
この本は「ぼくはアフリカにすむキリンといいます」(偕成社)。主婦だった東京都の岩佐めぐみさん(60)がデビュー作として2001年に出した。絵本作家の高畠純さんが絵を担当した。
ひとりぼっちのキリンが会ったこともない誰かに「きみのことをおしえて」と手紙を出し、物語は始まる。受け取ったペンギンと手紙で質問しあいながら、互いの姿に想像を膨らませる。ついに対面を果たすが、初めて見た相手の姿は――というストーリーだ。
ミヒャエル・エンデの名作「モモ」なども受賞したドイツ児童文学賞の審査では「高い文学性を持ち、子どもが実際に経験している世界と結びつく」と評された。ミュンヘン国際児童図書館に長年勤めたガンツェンミュラー・文子さんは「ドイツの学校の先生から『子どもたちはこの本が大好きです』と声をかけられる。日本の作品がこのように広まっている様子には驚きました」と話す。
一方、授賞式に出席したドイツ…