張栩名人への挑戦権を争う第44期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)は17日、大阪と名古屋で第2ラウンドの計2局が打たれた。大阪では、前名人の井山裕太五冠(29)がリーグ初参加の鈴木伸二七段(28)に敗れる波乱があった。
張名人へのリベンジを期す井山五冠は大阪市北区の日本棋院関西総本部で、鈴木七段と対戦。序盤から中盤にかけ、右下隅の定石変化から起きた競り合いが右辺から上辺にまで波及した。最終盤、黒番の鈴木七段がややリードした局面で井山五冠が勝負手を放ち、大コウが発生。すわ逆転か、という微細な局面になったが、黒番の鈴木七段が248手までで半目勝ちした。
12月の開幕戦では両者明暗が分かれていたが、これで両者ともに1勝1敗の五分の星となった。鈴木七段は感想戦の後、リーグ戦初白星について、「粘り強く勝機をうかがいながら打てました。これで全敗は避けられたのでうれしい」と笑顔を見せた。さらに「井山さんからの白星は大きいですが、井山さんに勝ってしまったので、この後、全敗はできないというプレッシャーもあります」と気を引き締めた。これで井山五冠との対戦成績は2勝0敗。敗れた井山五冠は「最後は細かくなりましたが、自分が薄そうな半目でした」と振り返った。今後のリーグ戦については「長丁場なので、1局1局という気持ちで打っていきたい」と話した。
一方、名古屋の日本棋院中部総本部では、リーグ順位5位の羽根直樹九段(42)が、リーグ初参加の孫まこと七段(22)と対戦した。序盤から激戦模様となり、ねじりあいの末に白番の孫七段が中押し勝ちを決め、うれしいリーグ初白星となった。リーグ成績は、孫七段が1勝1敗、羽根九段は第1ラウンドは手空き番だったため、0勝1敗。決着は、夕食休憩前の早い時間だった。(高宮正尚)