柔道男子66キロ級の世界王者・阿部一二三(日体大)が、「小学生以来」という初戦負けを喫した。10日まで行われていた国際大会グランドスラム(GS)パリで、格下のイタリア選手によもやの一本負け。「負けて成長できることもある」と前向きに敗戦をとらえているが、日本柔道界のエースに海外勢のマークは厳しさを増している。
阿部は14日に帰国。羽田空港で取材に応じ、「組んだ瞬間からやりにくかった」と試合を振り返った。
初戦の2回戦で対戦したイタリア選手は、昨年の世界ジュニア王者ながらシニアでは世界ランキング19位。阿部の強みである担ぎ技を警戒し、試合開始から極端に腰を引いてきた。
頭を下げた相撲のような前傾姿勢を崩さない相手に足技も出せず、開始2分、肩車で先に技ありを奪われて「焦ってしまった」。さらに約40秒後、再び肩車をかけられて宙に浮いた。腹ばいに落ちたようにも見えたが、結果は技ありで合わせ技一本。「自分が想定していた以上に相手に研究されていた。自分の柔道ができなかった」と敗因を語った。
豪快に技を繰り出して柔道の面白さを体現してきた21歳だが、最近は、今回のように腰を引いて防御を固める相手に苦戦する試合も目立つ。「自分の技に入れる状態をつくれば一本は取れる」と自信は失っていないが、今後も海外勢からは強みを封じられる戦い方を挑まれることが増えそうだ。「組み手や足技に練習の中心を置いて、どうしたら自分の投げ技が決まるのか考えながら練習したい」。3連覇がかかる8月の世界選手権に向けて出直しを誓った。(波戸健一)