札幌大谷(北海道)の太田流星君(3年)の背番号は「17」。中高一貫校で5年間共に汗を流してきたエースの西原健太君(同)の背中を追いかけ、チームを支える投手に成長した。
ニュースや動画をリアルタイムで!「バーチャル高校野球」
29日の第1試合の明豊(大分)戦では四回無死一塁から、先発の後輩を受け継いで登板。「走者を出してすいません」。「後は任せろ」。その後2失点でしのいだが、及ばなかった。西原君が肩を痛めて登板できないなか、24日の初戦で完投。学校に春夏通じて甲子園初勝利をもたらした。
系列の札幌大谷中は08年に女子校から共学化した際に道内の中学で唯一の硬式野球部を創設。翌年、共学化した高校にも野球部ができた。二人はこの中学出身だ。
西原君が中学入学時から右の速球派として期待され、早くから公式戦で投げていた一方、太田君は投手として思うような成績が残せず、指導者の勧めで外野手へ転向した。ベンチにも入れない日々が続き、スタンドから見るマウンドも西原君も遠かった。
「最後の1年間は、自分がやりたいことをやりたい」。中2の秋、投手に戻ると決めた。「西原と違う特長を出さなければ、マウンドに立てない」と、様々な投げ方を試した。行き着いたのが右横手投げだった。
外野フェンスに沿って右翼から左翼まで何度も走り込んだ。体力がなかった太田君には「きつかった」が、昨秋の北海道大会で結果に結びついた。準決勝、決勝ではともに西原君を救援し、打者の手元で曲がる変化球で相手打線を翻弄(ほんろう)した。明治神宮大会でも好投し、チーム最多47回3分の1を投げて防御率0・95と優勝に貢献。抜群の安定感をほこる投手に成長した。
太田君の成長に、西原君も刺激を受けている。西原君は投げられないことを悔しがったが、「流星に任せた」と声をかけた。試合では一塁手として出場。初戦のピンチには「勝負どころだからしっかり投げろ」と声を張り上げた。黙ってうなずく太田君がいつもより頼もしく見えたという。
副主将として投手陣を引っ張る西原君と、マイペースな太田君。太田君にとって西原君は「頼れるエース」だ。「エースになりたい」という思いよりも、西原君と一緒に勝ちたいという思いの方が強い。
この日は後輩が良い投球をしていたので「自分もしっかり抑えなきゃと思い、力んだかもしれない」。甘い変化球をとらえられた。「悔しい。この経験を西原と一緒に夏に生かしていきたい」と太田君。船尾隆広監督は「背番号17が太田のエース番号なんです。甲子園では上出来だった。さらにレベルアップを図ってほしい」と期待した。(遠藤美波)