岐阜県関市の「道の駅平成」。駅の会議室に集まった地元の人ら約120人がテレビ中継で新元号「令和」の発表を目にした。
新元号は「令和」(れいわ) 万葉集典拠、国書由来は初
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「いよいよ平成が本当に終わると実感した。意外な感じがしたが、漢字としては書きやすいと思った」。集まりを企画した地元住民有志の「ありがとう!平成時代実行委員会」の美濃羽(みのわ)治樹委員長(68)は話した。
岐阜県関市下之保にある平成地区。地区の名前は「へいせい」ではなく「へなり」と読む。30年前に発表された元号と同じ表記だっただけで、当時わずか9戸の小さな集落に、連日多くの人がやってきた。
特産のシイタケに「平成」の名を付けると飛ぶように売れた。テレホンカード、クッキー。「平成」と付けば何でもよかった。
ブームは3年ほどで終わった。でも、住民たちは終わらなかった。
「ここには何もないと思っていたけど、山もある、川もあると気づいた」。川島京子さん(63)は振り返る。シイタケだけじゃない、新たな地域の魅力探しが始まった。
無料で足湯を楽しめる「平成足湯治」。高齢者も楽しめる「平成パターゴルフ場」。焼きたてのパンが食べられる「パン工房平成」。平成地区近くにできた「道の駅平成」を中心にスポットが次々生まれた。道の駅に開業当初から勤めた川島さんは「来てくれる人が減ったと言ったって、そもそも元号が平成になる前は観光客なんて1人もいなかったんだから」。
降ってわいたようなブームの後、地元を見つめ、アイデアを出し、協力して作った新しい「平成(へなり)」は、ブームに頼らない地域の魅力になった。地区は現在6戸。高齢化が進み、人口も減ったが、いまも多くの人が訪れる。
3月下旬、道の駅平成であった「平成まつり」。地区に住む田畑和義さん(64)は炭火で試食用のシイタケを焼いていた。香ばしいにおいに行列ができた。「30年たっても平成シイタケに行列を作ってくれる。本当にありがたい」と喜んだ田畑さんはこう振り返った。
「平成のおかげで普通ではできない経験をさせてもらった。平成が終わっても、平成地区は永遠だ」(山野拓郎)