首都圏の大学入試は今春、混乱が多かった。文部科学省による規制を受けて大規模私立大が合格者数を絞り込んだ影響で、受験生も大学側も、これまでの経験則が通用しない事態への対応を迫られた。(増谷文生)
「直前の模擬試験でA判定だった生徒が次々に不合格になった。大学入試センター試験を利用した入試では、昨年なら楽に合格できる点数だった生徒も落ちてしまった」
埼玉県立の進学校で進路指導を担当する教諭は今年の入試について、こう嘆く。「滑り止め」で受けた大学も、不合格になった生徒が多かったという。
原因は、文科省が2016年から始めた、大規模私大を中心とした「定員管理の厳格化」だ。地方活性化を目指し、大都市圏に大学生が集中する状況を改めるといった目的で、基準以上の入学者を受け入れると、国からの私学助成金がゼロになったり、学部新設や定員増加ができなくなったりする。これまで、入学辞退者などを見込んで合格者を多く出していた大規模私大は正規合格者数を抑え、入学者が定員に満たない場合は細かく追加合格や補欠合格を出すようになった。
進路指導教諭によると、昨年の入試でも合格者が絞り込まれ、特に保護者の不安が高まっているという。「浪人して、上位の大学に進むように勧めても、保護者が合格しやすい大学への進学を決めてしまう」と明かす。
東京都内の私立中高一貫校では、一般入試を受けた生徒の約13%が、直近の模試でA判定となった大学で不合格になったという。この学校の教頭は「今後は早い段階で生徒の特質を見極めて、推薦・AO入試の指導を強化する方針を決め、具体策の検討を始めた」と話す。
合否がなかなか決まらないケースもあった。東京都江戸川区の会社員男性(55)の長男(19)は2月5日に拓殖大を受験し、1週間ほどして補欠合格の「候補者」となったという通知を受け取った。最後の補欠合格者が決まる3月26日まで待ち続けたが、吉報はなく、他大学に入学した。男性は「不合格は仕方ないが、息子が長い時間、期待して待たされたのが納得できない。受験生の視点がない文科省の政策に振り回された気持ちだ」と憤る。
補欠合格、電話かけ続けた専修大
大学側も対応を迫られた。専修…