プロゴルファーの強さや輝き具合を示す折れ線グラフがあるならば、1997年マスターズを圧勝したタイガー・ウッズのグラフは、それから10年以上も上昇の一途だった。
「終わった」レッテルはね返す ウッズ、見事な復活劇
そのグラフが初めて大きく折れ曲がったのは2009年の暮れのこと。世界中を驚かせた不倫騒動後、妻が去り、スポンサーが去り、コーチも相棒キャディーもウッズから離れていった。自業自得ではあったが、次々に見捨てられたウッズは徐々に勢いを失い、勝利から遠ざかっていった。
そんなウッズから何があっても離れなかったのは2人の子供たち。彼らは物心がついて以後、父親の戦う姿も勝利も見たことがなく、「子供たちに優勝を見せたい」という思いがウッズの最大のモチベーションになった。
やがて仲間は増えていった。かつてのライバルだったフィル・ミケルソン(米)はひそかに激励をくれる心の友になった。4度目の腰の手術後、復帰練習に付き合ったのは一回り以上も年の離れたジャスティン・トーマスとリッキー・ファウラー(ともに米)だった。若者たちの親切心を中年ウッズは謙虚に受け入れ、感謝した。
マスターズ最終日。勝利したウッズに大観衆は温かい拍手を送り、ウッズは万歳ポーズで「ありがとう」を伝えた。笑顔で出迎えたのは家族や大勢の仲間たち。一度は人々から見捨てられたウッズが、人々に助けられ、再びメジャーチャンピオンになった。彼のグラフを再び押し上げたのは、みんなの力。そんなドラマが素敵だった。(ゴルフジャーナリスト・舩越園子)
「史上最高の復活劇」 ウッズのマスターズV、全米興奮