自由民主主義体制下でも政治指導者がヘイトスピーチを広めている――。国連がヘイトスピーチに対処する行動計画を発表した18日、グテーレス事務総長がそんな演説をした。名指しは避けたが、トランプ米大統領を念頭に置いていたと受け止められている。
グテーレス氏はこの日、加盟国に向けた演説で、政治体制を問わず、「何人かの政治指導者が憎悪に満ちた考え方や言葉を広め、普遍化し、公の議論を荒らし、社会を弱体化させている」と指摘。ヘイトスピーチへの対処に国際社会が臨む重要性を説いた。
発言は移民らに向けられたトランプ氏の差別的な発言に釘を刺す形となり、演説後の会見で、記者から「(だれの行為か)名指しした方が、インパクトを与えられるのでは」との質問が出た。
グテーレス氏は「名前を公表すれば、それだけが広く伝わってしまう。私が望むのは、本質的な問題がしっかりと扱われることだ」と苦笑いしてかわした。
米国は国連予算の22%を負担する、最大の拠出国。対象を特定しての批判は避けたとみられている。
この日発表された国連の行動計画は、宗教や民族、国籍や人種に基づいた差別的な発言などについて、データを集積、分析することや、被害者支援に取り組むことを盛り込んでいる。(ニューヨーク=藤原学思)