2018年1月26日。暗号資産(仮想通貨)交換業者「コインチェック」のネットワークから580億円分の暗号資産「NEM(ネム)」が流出した。だれがどう侵入し、奪ったのかは今なお不明だ。付け入る隙を与えたガバナンス(企業統治)不備を指摘され、この事件をきっかけに金融庁は業界引き締めにかじを切った。国内で暗号資産ブームは一時、下火になったが、創業者の和田晃一良(こういちろう)社長(肩書は当時、28)はあきらめなかった。ネット証券大手のマネックスグループの傘下に入り、執行役員に「降格」されて出直す道を選んだ。和田氏はいま、何を思うのか。胸の内を聞いた。
北朝鮮のハッカー集団と装い攻撃? コインチェック事件
仮想通貨はどこへ行く 夢破れ、名を変え、闇に沈むのか
仮想通貨は「暗号資産」に改称 法定通貨との誤認防ぐ
「これは大変だ」
それは突然の出来事だった。昨年1月26日午前11時25分、社内で打ち合わせ中だった和田氏の携帯電話が緊急アラートのメールを受信した。ネットワーク上で実際に管理しているNEMの残高が帳簿上の残高を大きく下回っているという警告だった。
――そのメールを見たときにどう行動したのですか。
「これは大変だと思った。システムのエラーも考えられたので、まず本当かどうかを調べた。複数の方法で調べたところ、10分ほどで流出を確認できた。引き算したら、580億円相当ともわかり、すぐに対応に走った」
――対応とは。
「NEMはかなり危険な状態に…