(15日、高校野球神奈川大会 伊志田6-5神奈川工)
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「平常心」。神奈川工1点をリードされた七回、1死二塁のピンチを迎えた。エース錦織(にしきおり)颯大選手(3年)は帽子を取って、つばに書いてある文字を見ながら、自分に落ち着くように言い聞かせた。
2年前まで神奈川工でエースだった兄大樹さん(19)の帽子。小1の時に一緒に野球を始め、2人でよくキャッチボールをした。話題は、いつも野球ばかり。
この日の朝、がちがちに緊張している錦織選手は、大樹さんから「思いっきりいけよ、平常心だぞ」と声を掛けられた。
錦織選手は投手にこだわりを持っている。「野球は八割が投手で決まる。試合の流れを作るポジション」。大樹さんはそんな弟を「寡黙なタイプ」と評す。マウンドでもポーカーフェースで、打たれても動じず、三振を取っても表情を変えない。
兄の書いた「平常心」の文字を見て落ち着きを取り戻し、次打者を空振り三振。さらに続く打者も見逃し三振。マウンド上でおたけびを上げ、ガッツポーズした。信太俊郎監督は「普段の錦織にはない気迫が出ていた」。
九回表、神奈川工は同点に追いつく。「延長戦になっても粘ってやる」。だが、結果は九回裏無死満塁の大ピンチにサヨナラの押し出し。思わず、マウンドでしゃがみこんだ。「スタミナが足りず、球が浮いてしまった。体力をつけて、終盤になっても粘ることができる投手になりたい」。大学でも野球を続けていくつもりだ。(岩本修弥)