(15日、高校野球神奈川大会 元石川8-1高浜)
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七回表二死。高浜の二走、山崎達也選手(3年)が三塁を回った。必死に本塁を目指すが、返球が先に相手捕手の元へ。「厳しい。でも絶対かえるぞ」。捕手をかいくぐり、ベースに手を伸ばすと、「セーフ」と審判の声が聞こえた。
部員不足に悩まされ、昨冬、ついに現3年生の3人だけに。1人がけが、もう1人が風邪で休めば、部員1人とマネジャー、指導陣だけで練習。練習試合はOBに助っ人を頼んで臨んだ。
3人の仲は、必ずしも良くなかった。11月から捕手になった星野哲冴(てつご)選手(同)が配球を考えても、ずっと投手をしてきた山崎選手は「それじゃねぇんだよな」という顔に。つい言い方がきつくなってケンカ腰になることもあった。そんな2人をつなぐのが、温和な鈴木大輝選手(同)。練習でのミスを直せないことが悔しくて、鈴木選手が退部を考えると、「お前がいなかったら困る」と2人が引き留めた。
春、1年生を迎えて単独出場が視野に入った。でも「ここまで3人でやってきて、今さら1人がまとめるのはやめよう」と、「3人主将体制」を決めた。登録上、主将マークをつける星野選手は「2人の方が優れていることも多いから、試合のときは任せっきり」。山崎選手は得意の笑顔とかけ声でチームの士気を上げ、一塁手の鈴木選手は内外野をまとめる。
この日、コールド負けがかかった七回。「先頭の自分が絶対に出る」と鈴木選手が安打で出塁。次打者のゴロで併殺、二死になるも、「大輝が打ったから俺も打たないと」と山崎選手が二塁打を放つ。続く初球を星野選手が右翼に運び、山崎選手が生還した。3人の絆で1点をもぎ取った。
「3人が打って理想の形の1点」「2人を信じて1点取れた」――。仲が悪くて仲が良い、「3人の主将」の夏が終わった。(木下こゆる)