(27日、選抜高校野球 啓新5―3桐蔭学園)
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今大会、別のチームで出場した双子がいる。桐蔭学園(神奈川)の冨田健悟君と、横浜(同)の進悟君だ。ともに2年生。27日、兄の健悟君が、すでに敗れ去っていた弟進悟君の悔しさを胸に甲子園を駆けた。
「同じ神奈川県勢として横浜の借りを返す」。桐蔭学園の1番中堅で先発出場した健悟君は、敗れたものの2安打と輝いた。
2人が野球を始めたのは小学1年のとき。小学4年の冬からは、清宮幸太郎選手(日本ハム)らが輩出した名門の東京北砂リトルにそろって進んだ。ともに主力で、2015年にはリトルリーグ世界選手権に出場。米国チームとの決勝で2者連続本塁打を放ち、世界一を経験した。
二卵性の双子で、体格や性格は違う。174センチ65キロで右打ちの健悟君はインドア派で読書家。ミステリー小説が特に好きだという。182センチ75キロで左打ちの進悟君は根っからのアウトドア派。「向こうが本を読んでいる間もずっと野球をしていました」と笑う。
中学までチームメートだった2人は高校で別の道を選んだ。健悟君は「父がやっている不動産の仕事に興味がある。勉強も頑張りたい」と、桐蔭学園を一般受験。野球の練習後には補習も受ける。進悟君は「レベルの高い選手が集まる高校で自分を高めたい」と横浜に進学した。
高校進学時に2人で話したことがある。「3年間で1回は対戦できるといいね」。その願いは昨秋の県大会決勝で、早くも実現。そのときは、11―2で進悟君の横浜が勝った。
互いに刺激し合い成長した2人。選抜出場が決まったあとは電話で連絡を取り、大舞台でのプレーに夢を膨らませてきた。甲子園入りしてからは両校が同じ宿舎だった。進悟君は負けたその日、ロビーで会った健悟君に「球場の雰囲気がすごい。のまれないように注意しろ」と助言した。
目標だった「双子で決勝対決」の夢は果たせなかった。健悟君は「また来年の選抜も可能性があるので」といった。その前に今夏の神奈川大会での代表争いだ。「(進悟君の)横浜には絶対勝ちたいです」。力強く言いきった。(安藤仙一朗)