原巨人に衝撃が走った。10月3日の高校生ドラフトで巨人に4巡目指名された済美の福井優也投手(17)が、入団を辞退することを5日、発表した。同選手の父親名でマスコミ各社に辞退を表明するファクスが送られたもので、巨人がドラフト指名選手から入団拒否されるのは実に25年ぶり。甲子園で春夏通算9勝を挙げた期待の大型右腕に、チーム一丸でのV奪回を目指す原巨人が蹴られた。
仮契約の予定日だった7日まであと2日と迫ったこの日の午後5時前だった。マスコミ各社に福井の父である「保護者 福井俊治」を送り主とした1枚のファクスが届いた。契約辞退。巨人がドラフト指名選手から入団拒否されるのは80年のドラフト4位指名、瀬戸山満年(中京)以来、25年ぶりの出来事だ。くしくもその年の1位指名は原監督。チームは予想外の激震に見舞われた。
福井は家族とともに大の巨人ファンで、自宅には原監督のレプリカユニホームも飾ってあるほど。福井自身もドラフト当日には「早く原さんに会って話がしたい」と明言。10月12日の指名あいさつでは「喜んで受けたい」とも話していた。だが、それからの24日間で気持ちは180度、ガラリと変わった。
文書によると、福井側は昨年春甲子園で優勝、夏準優勝し9勝を挙げたことから早い巡目でのドラフト指名を期待していた。だが、10月3日の高校生ドラフトでの指名順位は巨人の4巡目。前日4日に仮契約を結んだ加登脇(北照)は甲子園出場経験はないが、指名順位は福井より上の3巡目だ。これらの要素が福井のプライドを傷つけ、最終的に入団辞退の引き金となった可能性もある。
今後は社会人でプレーするか、大学に進学するかの進路を選択することになるが、いずれにせよ最終的には再びプロ入りを目指すことになる。済美の上甲監督は「きょう父親から事後報告の電話があった。本人は岡山に帰っており、最近は一切接触をしていない。今後(進路)については福井の方で心当たりがあるのだろう」と寝耳に水の事態に動揺を隠し切れなかった。
球児のあこがれと言われ続けた“巨人ブランド”も通じず、有望新人に蹴られた痛手は大きい。原監督は「すごくいい投手と聞いていたが、今回は縁がなかった。3、4年後にプロの門を叩いた時に、一緒にできることを楽しみにしている。将来、ジャイアンツに来てくれることを願います」と話したが、心中は無念の思いでいっぱいだったに違いない。
FAで豊田、野口の獲得に動きだすなど、来季へ向けての体制を着々と整える中での不測の事態。“福井ショック”は今後も尾を引きそうだ。
▼巨人・清武球団代表 担当スカウトが家族を通じて本人の意思を確認しましたが、翻意は難しいという判断だったので契約辞退を了承しました。期待していただけに大変残念ですが、まだ若いし能力もあるので、プロを目指して頑張ってほしい。
≪5年ぶりの“辞退”≫ドラフト指名選手の入団辞退は最近では珍しく、00年オリックス1位指名の内海哲也(投・敦賀気比→東京ガス→巨人)、同5位指名の開田博勝(外・三菱重工長崎)以来5年ぶり。巨人では80年4位指名の瀬戸山満年(捕・中京→プリンスホテル、現少年野球チーム・プリンスジャパン監督)以来25年ぶり34人目。ちなみに巨人に1位指名されながら入団を辞退したのは73年の小林秀一(投・愛知学院大)だけ。