西武からFA宣言した豊田清投手(34)が27日、都内のホテルで原辰徳監督(47)同席のもと2度目の交渉を行い、巨人入団を決めた。背番号は「20」で、年俸はベース自体が増減する「変動相場制」の2年契約と、結果が出なければ大減俸のリスクもある厳しい内容。球界を代表するクローザーが新天地での成功を目指し、あえてイバラの道を選んだ。
腹をくくった視線が一瞬、止まった。原監督に続き会見用のひな壇に上がった豊田が見上げたのは、頭上にあった球団旗。そのGマークを十字架のように背負いながら新守護神候補は悲壮な決意を明かした。
「(西武という)安住の地よりも、ジャイアンツというプレッシャーのかかるチームで自分を追い込んでやった方がいいと決断した。入るのが目標じゃない。逃げ場がないという感じです」
両隣の原監督、清武球団代表の笑顔とは対照的だった。終始、浮かんだ厳しい表情。自分を追い込むために、異例ともいえる「年俸変動制」を受け入れた。「この2年は働けば高くなる、働かなければ安くなるという非常に特殊な形態。年俸そのものが大いに上下する」と清武代表が説明した前代未聞の契約形態。来季は西武時代の2億3000万円が維持される見込みながら、セーブ数など数値設定がクリアできなければ、50%など大幅減俸もある。いうなれば“逆出来高制”だ。
FA選手には不釣り合いな契約を結んだ裏には絶対的な自信がある。「長いスパンで見れば西武の方が条件的にはいい。でも、もう一度自分を追い込める場所で熱い気持ちを出して戦える場所で、と思った。抑えに対する気持ちは誰にも負けない」。決意を見守ってもらうため真由美夫人(35)と2人の愛娘も会見に連れてきた。
02、03年とパ・リーグのセーブ王を獲得。両リーグでの同タイトル獲得となれば江夏、牛島以来史上3人目の快挙となる。「優勝のためにチームの最後を支える。1球1球に思い入れを込めて優勝という目標に向かってひたすら頑張りたい」。豊田が、口元を引き締めた。
≪原監督「頼もしい限り」≫会見に同席し、真新しいユニホームを豊田に着せた原監督は「マウンドでの集中力、1球の重み、闘争心、熱い魂のような…。ジャイアンツにうってつけの投手。こういう決断になって大変うれしいし、頼もしい限り」と笑顔で話した。
起用法に関しては「もちろん最後の9回で、クローザーとして雄姿を見せてほしい」。その一方で「自分の中では7、8、9回というのが重要。孤独感を味わわせたくないし、みんなで戦おうということ」と状況に応じた起用法を示唆。役割分担は来春のキャンプ以降に決める予定でいる。
「抑えのスペシャリスト。孤高の投手を受け入れることができ、ホッとしている」と清武球団代表。豊田との電話では「(自分の)進退を懸ける」と究極の殺し文句で口説いたという。FAで同時に2選手を獲得したのは過去3度。うち2度は翌年のリーグVに結びつけているが、再現なるか。
スポーツニッポン 2005年11月28日