【ベイルート澤田克己】イスラエル軍の攻撃が続くレバノンで反イスラエル感情の高まりと連動してイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの支持が高まっていることが現地の世論調査で明らかになった。専門家は、30日にレバノン南部カナへの空爆で多数の犠牲者が出たことでヒズボラ支持の傾向はさらに強まっていると分析している。
民間研究機関・レバノン情報調査センターが24~26日に実施した世論調査によると、ヒズボラによるイスラエルとの戦闘を支持する人は86.9%に上った。シーア派と対立するイスラム教スンニ派やキリスト教徒でもそれぞれ88.9%、80.3%の高い支持率だった。
今回の軍事衝突のきっかけとなったヒズボラによるイスラエル兵拉致に関しては70.1%が支持すると回答した。ただ、拉致への支持はシーア派の96.3%に比べ、スンニ派73.1%、キリスト教徒54.7%と宗派によって温度差が出た。
同センターのアブド・サード所長は戦闘への態度は「反イスラエル感情」、拉致への回答は「ヒズボラへの支持の強さ」と読み替えることができると説明する。攻撃開始直後にはレバノン世論にヒズボラ不信の声もあった。世論が変わった背景には「レバノン攻撃は事前に準備され、拉致事件は口実にすぎなかったとイスラエル・アラブ双方のメディアが暴露したことがある」と指摘する。
同所長はさらに「民間人の犠牲が多いことに加え、ヒズボラが攻撃に屈しない姿勢を貫いていることも支持を集めているようだ」と話す。多くの子供が犠牲になったカナ空爆は反イスラエル感情をあおり、ヒズボラへの支持を強める方向に働くだろうと分析する。
国連によると、29日までのレバノン側の死者は約600人で、負傷者も3000人超に達している。死傷者の大半は民間人とされ、レバノンのファトファト暫定内相はうち35%が12歳以下の子供だと指摘している。
毎日新聞 2006年7月31日