我々は最近では、中国の躍進を当然のこととして受け止めている。中国の巨大経済は減速しているが、いくつかの測定尺度では、中国の生産高はいまや米国のそれよりも大きい。中国は戦略的に、遠く離れた地であるアフリカや中南米まで影響力を広げている。軍事的には、特に中国近海で、より強固な態度をとり始めている。一方、中国の企業はどうだろうか。中国企業も嵐で世界を席巻するだろうか。我々の多くが中国製の携帯電話で話したり、中国製の自動車を運転する日が来るのは単に時間の問題なのだろうか。
アリババの社名が入ったジャンパーを着たトレーダー。この日、アリババはニューヨーク証券取引所(NYSE)へ上場した(2014年9月19日)=ロイター
確かにそのようにも見える。聖書に出てくるビヒモスのごとく巨大な国家が中国企業の勢力図を支配していた時期を経て、突如として中国の民間企業の躍進が目立ってきた。昨年には中国電子商取引最大手のアリババ集団が史上最大の新規株式公開(IPO)を果たした。これにより250億ドルを調達し、時価総額は2000億ドル以上にのぼる。中国ネット検索大手の百度(バイドゥ)やソーシャルメディアとゲーム大手の騰訊控股(テンセント)などは中国の巨大なネット市場で確固たる地位を築き上げた。5年前には存在すらしなかったスマートフォン(スマホ)メーカーの小米(シャオミ)でさえ、無名の状態から突如として世界最大のスマホ製造会社の1社へと変身を遂げた。
これらの企業やほかの中国企業が、まもなく世界をあっと言わせる企業になる可能性があることは、確かに飛躍しすぎた話ではない。いってみれば、日本製品が粗悪品だとみなされていたのはそう昔の話ではない。ソニーやパナソニックなどの企業が他社と競争するという挑戦は過ぎ去ってしまったが、日本はトヨタやソフトバンクなどの企業によって世界クラスで通用するビジネスを確立した。サムスン電子や現代自動車による韓国もそうだ。中国も追随しそうなものだが、なぜそうなっていないのか。
■規制環境に隔たり
米グーグル、独BMW、米ゴールドマン・サックスのような企業が、まだ(中国企業に)おびえる必要がないという理由は少なくとも4つある。1つ目の理由を今月アリババ集団が浮き彫りにした。同社は、IPOを実施する前に重要な情報を開示しなかったという疑惑をもたれ、米国で集団訴訟の危機に直面している。同社が模造品の取り締まりを怠ったという疑惑を巡って、中国の規制当局と話し合いがあったことを伏せていたという申し立てによるものだ。創業者ジャック・マー(馬雲)氏が言ったとおり、それは長期的にはアリババの利益に影響を及ぼすかもしれない。国外の市場に上場する理論的根拠の一部として、より厳しい基準にさらされるということがある。一方で、短期的には、今回の事件が中国と米国の規制環境に大きな隔たりがあることを露呈している。