有明海で長年続く魚介の不漁はノリ養殖で使われている酸処理剤(殺菌剤)が原因として、福岡、佐賀、熊本の3県の漁業者約900人が、使用を禁止しない国に1人当たり10万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こすことが19日、漁業者らへの取材で分かった。提訴は3月上旬の予定。さらに150人程度が参加を希望し、最終的に千人を超える見通し。
一部の漁業者は酸処理剤使用を認めた水産庁通達の違法確認も求める。
有明海の不漁を巡っては「国営諫早湾干拓事業が原因」と訴える佐賀県の漁業者が、潮受け堤防排水門の開門を求め、一方で営農者が開門に反対するなど、これまで諫早干拓の是非が議論の中心だった。今回の訴訟の結果によっては、諫早問題に影響を与える可能性もある。
提訴する漁業者によると、ノリの養殖では収穫量や品質を上げるため、ノリが付着した網を酸処理剤に浸し、病原菌を殺菌した上で再び海に戻してノリを増やす作業を繰り返す。
漁業者側は「海底の泥や砂に蓄積された酸処理剤の成分が赤潮の原因になっている。使用を禁止しない国は漁業権を侵害している」と主張している。
酸処理剤の使用は1980年代から本格化。水産庁は84年、使用方法を「自然界で分解されやすい有機酸を使用し、余った分を海中投棄しない」などと定めた通達を出した。「一定のルールを守れば海への影響は限られる」との立場だ。
水産庁栽培養殖課の担当者は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。〔共同〕