【ソウル=山口啓一】岸田文雄外相は21日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相とソウル市内で約1時間半会談した。日韓国交正常化50周年を迎えたことを踏まえ、相互の意思疎通の重要性を確認。2009年以来開いていない外務・防衛当局間の安保対話を早期に再開することで合意したが、旧日本軍による従軍慰安婦問題などの課題では、議論は平行線をたどったもようだ。
会談を前に握手する岸田外相(左)と韓国の尹炳世外相(21日、ソウルの韓国外務省)=共同
岸田氏は会談後、記者団に「日韓関係の前進に向け前向きな意見交換ができた」と説明。会談で尹氏の早期訪日を招請し、適切な時期で調整することで一致したことを明らかにした。尹氏は会談の冒頭「50周年の年に開く初めての外相会談で、特別に意味がある」と述べた。
慰安婦問題ではこれまでの外務省局長級協議を踏まえ日韓双方の立場を説明したが、解決に向けた具体的な合意には至らなかった。安倍晋三首相が今夏に発表する戦後70年談話について尹氏が関心を示したのに対し、岸田氏は安倍政権が歴代内閣の歴史認識を引き継ぐとの立場を強調した。
岸田氏は韓国による日本産水産物輸入規制や産経新聞前ソウル支局長が在宅起訴された問題も提起した。北朝鮮問題については日韓や日米韓3カ国での連携強化で一致した。
両氏の会談は米ニューヨークで実施した昨年9月以来で、今回で5回目。ソウルで会うのは初めて。安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領による初の首脳会談の実現に向け、対話を積み重ねていく方針も確認した。