(2015年4月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ときに重要なのはひとつの数字だけということがある。石油・ガス大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルによる英BGグループの買収提案の場合、それは原油価格だ。
このエネルギー分野の超大型買収の成否は「北海ブレントで1バレル=70~110ドル」というシェルが取引の際に使う原油価格の長期予想にかかっている、と欧州の有力な投資家たちは指摘する。
シェルおよびBGの株式を保有するヘンダーソン・グローバル・インベスターズの世界株式投資部門の責任者、マシュー・ビースリー氏は「本当に重要なのは、シェルの予想価格レンジの中央にあたる1バレル=90ドルまで原油価格が上昇すると信じるかどうかだ。もし90ドルまで上昇すれば、この買収は財務的に素晴らしい」と述べた。
シェルは8日にBG買収を発表した際、2018年から買収が収益に本格的に寄与していくとの見方を示した。だがアナリストは原油価格が回復しない場合、そうなるかを疑問視する。
懸念の大部分は買収価格についてだ。シェルはBGに50%のプレミアムを支払う。買収におけるBG株の評価額は470億ポンド、債務を含めるとほぼ550億ポンドになる。
これには株主の一部からシェルの配当に影響があるのではないかと懸念する声があがっている。同社の配当は、英国の株式投資家に支払われる配当の10%を占めている。
また、シェルのベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)が年間25億ドルのコスト削減の約束を果たせるかどうかという懸念もある。さらに、シェルはBG買収により原油の豊富なブラジルで外国資本では最大の石油会社になるものの、プロジェクトが遅れるリスクがある。汚職疑惑に揺れるブラジル国営石油会社ペトロブラスとBGの提携にも疑問符がつく。
シェル株を保有する資産運用会社カルミニャック・ジェスシオンの商品投資担当者はこう述べる。「この買収の成否は、原油価格の大胆な予想にかかっているだろう。シェルは大きく官僚的な組織で、買収で大成功した経験もない。合併後の新会社にはシェルの官僚主義的な部分が残り、より機敏なBGの体質が犠牲になる可能性もある」
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