岩手、宮城、福島3県で、東日本大震災後にがれきの中から見つかった写真が少なくとも200万枚ほど保管されている。持ち主に戻る数は少なくなり、費用や劣化の問題から返却作業を縮小する自治体も出てきた。震災から1500日が過ぎ、宙に浮く「思い出」をどう返すか、関係者は頭を悩ませる。
結婚式の新婦入場、和気あいあいとした旅行先の光景……。岩手県大船渡市の福祉施設では多くの写真が展示され、持ち主を待ち続けている。
見つかった約52万枚のうち、社会福祉協議会の活動で47万枚以上を返却。30年以上前に孫娘が生まれた時の写真を1月に受け取った新沼幸子さん(84)は「思いがけない宝物になった。本当にありがたい」と喜ぶ。
3県の沿岸市町村や関係団体は約500万枚の写真を収集、洗浄した。宮城県亘理、山元両町はデジタル化したデータから、似た顔の写真を検索できるシステムも備えている。しかし、引き取りは減少。同県石巻市はデジタル化を進め、未返却の現物約60万枚は昨春、燃やして供養した。
福島県では東京電力福島第1原子力発電所事故が影を落とす。県外への避難者も多い相馬市は高校の旧校舎で数十万枚を預かっているが昨年度は誰も捜しに来なかった。
ただ、岩手県陸前高田市では、年度末になると保管の打ち切りを心配して来訪者が増えるという。社会福祉協議会の担当者は「捜したいと思うタイミングは人それぞれだからこそ、長く続けたい」と語る。〔共同〕