【イスタンブール=佐野彰洋】財政危機に直面するギリシャは、5日に期日が迫っている国際通貨基金(IMF)への債務返済を月末に先送りすることをIMFに伝えた。6月中に期限を迎える4回分の返済計15億ユーロ(約2100億円)超は、30日までにまとめて支払う。主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)を前に、ギリシャ問題はヤマ場を迎えている。
3日、ギリシャのチプラス首相(左)はブリュッセルでユンケル欧州委員長と会談した=ロイター
ギリシャからの通告を受けたIMFが4日に公表した。IMFは同じ月に返済期限を迎える複数の債務元本の一本化を認めており、ギリシャの要請を受け入れるとみられる。
資金繰りに窮しているギリシャは、5日を期日とするIMFへの返済が危ぶまれていた。月内の一本化要請によって当面の危機は避けたものの、本質的な問題は解決していない。月末には再び返済資金の手当てを迫られる。
欧州連合(EU)は、ギリシャが年金改革や増税などの財政再建策を実行することを条件に、凍結中の72億ユーロの融資を再開する方針を示している。だがギリシャ国内では改革に対する反発が強くEUとの交渉は難航している。
G7サミットを前に、米政府や市場の不安を払拭したい独仏はギリシャ問題の解決を急いでいる。1日にはギリシャが財政構造改革の新提案をEUなどに提出。一方でEUなど債権団側もギリシャに求める改革を提案していた。3日にチプラス首相がブリュッセルでユンケル欧州委員長と会談するなど、事態の打開に向け慌ただしく動いたが、5日の返済期限には間に合わなかった。
チプラス首相は5日に迫ったIMFへの約3億ユーロについて返済する意志を示していたが、前言を翻して先送りを決めた。
ロイター通信によると、ギリシャの返済遅延は過去5年で初めてという。複数の債務元本を一本化する制度を利用するのは1980年代のザンビア以来とみられ、ユーロ圏の一角であるギリシャの利用は異例だ。