今後の大学院教育の在り方を議論している文部科学省の中央教育審議会(中教審)大学院部会は2日、世界最高水準の教育力と研究力を備えた「卓越大学院」(仮称)の創設などを盛り込んだ審議まとめの素案を示した。民間企業や海外の大学、研究機関などと連携し、様々な人材が共同研究できる組織を目指し、「知のプロフェッショナル」を育成するとした。
卓越大学院は、6月に政府が示した「日本再興戦略」の改訂版にも大学改革の一環として示された。人工知能やビッグデータなどを研究し、新産業の創出につなげることが期待されている。
素案では近年の日本の大学院教育について、「優秀な若者が博士課程に進学せず、国際競争力の地盤沈下につながりかねない懸念がある」と指摘。高度な専門性や倫理観をもとに新たな価値を生み出してグローバルに活躍できる人材を育成することが喫緊の課題だとした。
その上で大学院改革について、(1)体系的・組織的な教育の推進と学生の質の保証(2)産学官民の連携や社会人の学び直しの促進(3)法科大学院など専門職大学院の質の向上――といった7項目の方向性を提示した。
卓越大学院は、こうした改革の方向性を踏まえた重要施策と位置づけている。修士課程と博士課程を一貫した5年間のプログラムとし、日本が国際的に優位な領域や文理融合領域、新産業の創出につながる領域などの研究を想定。文科省は今年度中に産学官による検討会を設置して研究の対象領域や仕組みを示し、16年度以降に各大学が企業などと連携して具体的な構想作りを進められるようにする。
素案では最近の研究不正や博士号取り消し問題などを踏まえ、大学院での研究倫理教育や指導体制の改善が急務とも指摘。一定期間ごとに教員が研究倫理に関するプログラムを履修することや、論文指導には複数教員で当たったり、審査に盗用検索ソフトを活用したりすべきだとした。