北朝鮮による日本人拉致被害者の安否に関する再調査を巡り、日本政府は3日、北朝鮮側が再調査の開始から1年を迎える4日以降の調査継続を日本側に打診してきたことを認めた。安倍晋三首相が3日午前の衆院平和安全法制特別委員会で、北朝鮮が「すべての日本人に関する包括的な調査を誠実に行ってきているが、いましばらく時間がかかる」と伝えてきたと明らかにした。
衆院平和安全法制特別委で答弁する安倍首相。後方は右から中谷防衛相、岸田外相(3日午前)
首相は「調査開始から1年が経過する今もなお、拉致被害者の帰国が実現していないことは誠に遺憾だ」と述べた。「北朝鮮からの具体的な動きを早急に引き出すべく働きかけを強化する」とも強調。「対話と圧力、行動対行動」の原則のもとで、引き続き今後の対応を見極めていく考えを示した。いずれも自民党の木原誠二氏への答弁。
これに先立つ3日の閣議で、首相は岸田文雄外相と山谷えり子拉致問題相に北朝鮮への働きかけを強めるよう指示した。
正式な連絡は2日夜にあったという。昨年の7月4日に開始した再調査は当初1年をメドに終えるとしていた。政府高官は3日午前「さらに1年、2年をかけて調査するという話ではない」との認識を示した。中国・北京の大使館ルートを通じ、さらなる詳しい説明を求めていく考えだ。
菅義偉官房長官は3日の閣議後の記者会見で、北朝鮮への制裁について「働きかけの結果をみながら判断していきたい」と述べた。日本政府は北朝鮮が調査を開始した見返りとして独自制裁の一部解除に踏み切った。再調査を始めて1年がたっても具体的な進展がない現状を踏まえ圧力を強めるべきだとの声が強まっている。自民党の拉致問題対策本部は先月、解除した措置の再開とともに一層の制裁強化を求める提言を首相に提出した。
日本と北朝鮮が昨年5月に開いた外務省局長級協議で、北朝鮮は日本人の拉致被害者や拉致の疑いのある特定失踪者の安否について再調査を始めると約束。同7月4日に特別な権限を付与した特別調査委員会を設けて再調査を開始した。当初は昨年の「夏の終わりから秋の初め」に初回の報告をするとしていたが、いまだ正式な報告はない。