中日本高速道路が建設していた新東名高速道路の愛知県区間は来年2月の開通が決まり、静岡県の御殿場ジャンクション(JCT)から愛知県の豊田東JCTまでの約200キロメートルが東名高速道路と二重化される。慢性化している東名の渋滞が物流機能の停滞を招いていたため、中日本高速は開通を急いでいた。当初予定になかった追加投資は300億円に達した。
今回の浜松いなさJCT(浜松市)―豊田東JCT(豊田市)間、55キロメートルは2007年の着工時から15年3月の開業を目指してきた。が、重金属を含む土砂の処理などで昨年7月に16年3月までに1年先送り。これに地元の反応は「予想外で大変驚いている」(愛知県の大村秀章知事)と厳しかった。
それだけに19日の記者会見で安堵の表情を見せた中日本高速の宮池克人社長は「できるだけ前倒しを、と頑張ってきた」と語った。
完成が遅れたのは複数の自然要因が重なったためだ。切土のり面で地滑りの兆候や実際の崩落があり、自然由来の黄鉄鉱や重金属を含む土砂も大量に発生した。橋りょうの基礎部分が沈下したケースを含め、要した対策コストは計600億円あまり。うち半分が追加で発生したものだった。
同社によると、御殿場JCTと豊田JCT間はこれまで東名高速経由で180分かかっていたが、新規開業区間を含めて新東名を利用すれば所要時間を1時間近く短縮できる。
渋滞時だけでなく平時も物流のスピードが上がる。大量の資材や完成品を積んだトラックを常時往来させるトヨタ自動車などの製造業だけでなく、車両の回転率が上がる運送業にも新東名開通のメリットは及ぶ。
新区間の設計速度は時速120キロメートル。55キロメートルの半分以上をトンネルと橋りょうが占め、トンネル内で前を走る車が明るく見える「プロビーム照明」を導入。カーブの最小半径が3000メートル(東名は300メートル)、最大勾配は2%(同5%)と走りやすく、舗装の一部に鉄筋コンクリートを埋め込んで耐久性を高めるなど技術の粋を結集した。
ただ、同じく来年3月までの開業を目指していた新名神高速道路の四日市JCT―新四日市JCT間、約4キロメートルは半年ほど遅れるのが確実となった。こちらも渋滞が多発する東名阪自動車道のバイパスとして、産業界から早期開通の要望が強い。
神奈川県内を含む新東名の全線開通は2020年を予定している。中日本高速がデッドラインの重圧から解放されるのはまだ先のようだ。(市原朋大)