今春の選抜大会決勝で完投勝利した大阪桐蔭の根尾昂選手=4月4日、阪神甲子園球場、池田良撮影
愛知県外の高校野球の強豪校と県内校が対戦する「招待試合」が9、10日に開かれる。今年は今春に選抜2連覇を果たした大阪桐蔭(大阪)を迎える。昨年は早稲田実(東京)の清宮幸太郎選手=現・日本ハム=が100号本塁打を放った。毎年の好カードは、愛知県高校野球連盟が1年以上前から旬のチームに目をつけ、人脈を生かして実現につなげている。
投打で活躍しても…手抜かずベンチ掃除 大阪桐蔭・根尾
招待試合は県高野連前理事長の森淳二さんが県内の野球のレベル向上や人気活性化を図る目的で3年前に始めた。副理事長の鶴田賀宣さんとともに招待チームを選んできた。2015年履正社(大阪)、16年健大高崎(群馬)、17年早稲田実、18年大阪桐蔭と豪華な顔ぶれだ。
強豪校の場合、1~2年先まで週末の練習試合の予定が入っていることがある。招待する場合は早めに交渉しなければならない。
生きたのは、将来性を測る「先見の明」と人脈だ。
履正社は14年春の選抜大会で豊川(愛知)を準決勝で下し、準優勝していた。鶴田さんと履正社の岡田龍生監督は日本体育大硬式野球部の同期。選抜後、「来年から愛知で招待試合をやるから来てくれないか」と誘ったという。
履正社には2年生の好投手右腕が2人いて、1年後の成長に期待して声をかけた。しかし、招待試合には2人に加え、寺島成輝=現・ヤクルト=、安田尚憲=現・ロッテ=の両選手も出場。「これは予想外だった」と鶴田さんは笑う。
強気の走塁で相手を揺さぶる「機動破壊」で知られる健大高崎に声をかけたのも約1年前。森さんの「ああいう野球を勉強してほしい」との願いからだった。健大高崎のコーチがかつて愛知県内で指導者をしていた縁もあり、実現した。
昨年の早稲田実に打診をしたのは15年夏。甲子園で活躍する清宮選手を見て、「これはすごい選手になる」とすぐに動いた。これも鶴田さんが東京都の選抜チームに同行した経験があり、都高野連へスムーズに依頼できた。
この招待試合で清宮選手は高校通算97~100号本塁打を放った。清宮選手を見ようと、球場には早朝から長蛇の列ができた。鶴田さんは「地元の野球ファンに最高のシーンを見せられてよかった」と喜ぶ。
今年は大阪桐蔭。打診したのは2年前の春だった。前年の夏、根尾昂選手(3年)が飛驒高山ボーイズ(岐阜)から中日本選抜に選ばれ、世界大会に出場。そのプレーを鶴田さんが見ていた。今、根尾君にはプロも注目する。「野球センスの塊。大阪桐蔭への進学を知り、3年生になった根尾君を見てもらいたくて、入学直後にお願いした」。大阪桐蔭の西谷浩一監督の高校時代の後輩だった岡崎北の徳美典監督を頼り、招待が実現した。
他県でも招待試合は開かれているが、たいていは有料だ。しかし、愛知は無料で続けている。「人脈で助けてもらっている。それをファンの方々に恩返しできれば」と鶴田さん。
9日は刈谷球場で東邦(午前9時半~)と桜丘(午後0時半~)が、10日は岡崎市民球場で中京大中京(午前9時半~)と愛産大三河(午後0時半~)がそれぞれ大阪桐蔭と戦う。(竹井周平)