見つめ合った2人がその後に同じ作業をするとまばたきの頻度やコミュニケーションに関係がある脳の部位で血流の動きが似通ってくる――。自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の小池耕彦特任助教(神経科学)らの研究グループが脳の不思議な働きを突き止め、米科学誌(電子版)に発表した。
グループによると、見つめ合う行為は生後数カ月から始まり、会話など複雑なコミュニケーションの基礎になっている。研究の成果は他人の気持ちを読み取るのが難しい「自閉症スペクトラム障害」の治療に役立つ可能性があるという。
実験は初対面の同性のペア17組で実施。それぞれ磁気共鳴画像装置(MRI)に入り、まずモニター越しで互いの目を9分間見つめ合ってもらった。その後、画面上の同じ絵に視線を送り、再び見つめ合う作業を50分間繰り返した。
別の日に同じペアで7分間見つめ合うと、初めは全く異なっていた2人のまばたきの頻度と、コミュニケーションと関係する「大脳皮質下前頭回」の血流が似たような動きを示した。作業を省いたり、ペアを組み替えたりすると、似ることはなかった。
小池特任助教は「Jポップの歌詞にあるような『見つめ合い』は何かを起こすと信じられてきたが、今回の実験で構造が明らかになった」と話している。〔共同〕