【バンコク=小野由香子】タイの携帯電話電波競売で電波価格が高騰したのを受け、携帯各社の業績や株価の先行きに不安感が広がった。通信各社の株価は総崩れとなり、そろって年初来安値を更新した。落札の成否に関係なく各社は自社の入札判断の正しさを訴え、投資家らに冷静な対応を求めた。
今回の競売では900メガヘルツ帯の2枠を4社で争った。落札したのは業界3位のトゥルー・コーポーレーションと新規参入のジャスミン・インターナショナルで、落札額は計1520億バーツ(約5100億円)に達した。
トゥルーは前回11月の競売も制しており、費用負担は計1160億バーツにのぼる。スパチャイ・チャラワノン最高経営責任者(CEO)は21日の記者会見で「20年に一度のチャンスだった。価格は妥当だ」と訴えた。
大株主の中国移動による増資の可能性は「当面ない」と言明。社債の発行や銀行借り入れ、基地局など資産の売却で資金を捻出するとし、増資による株式の希薄化懸念の払拭に努めた。
ジャスミンのピット・ポタラミックCEOは数カ月以内に4Gサービスを始める意向を表明。「国外の会社との提携も模索している」と話した。
電波を手に入れるトゥルーなどは財務への不安が表面化した一方、競り負けた企業は競争で不利になるとの見方が広がった。
最大手アドバンスト・インフォ・サービス(AIS)は21日「価格が高騰しすぎて利益が出ないと判断した」との声明を発表。「今後のほかの投資機会のために財務の柔軟性を残すことが賢明と判断した」と説明した。
競売の決着後初の取引日となった21日のタイ株式市場で、通信株は軒並み急落した。下落率が最も大きかったのは電波を1枠も落札しなかった業界2位のトータル・アクセス・コミュニケーションで前日比27%安。AISは19%、トゥルーは9%それぞれ下げた。