【ドバイ=久門武史】サウジアラビアのジュベイル外相は3日、イランとの外交関係を断絶すると発表した。サウジがイスラム教シーア派の宗教指導者らを処刑したことに抗議し、イランの首都テヘランで群衆がサウジ大使館を襲撃したのを受けた措置。ジュベイル氏は、サウジ国内にいるイラン外交官に48時間以内の国外退去を求めた。
テヘランのサウジアラビア大使館の前で抗議するイランの民衆=AP
シリア内戦やイエメン情勢などを巡り鋭く対立しているサウジとイランの関係悪化は、決定的になった。過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭などで混乱する中東に、新たな不安定要素が持ち上がった。
イスラム教スンニ派の大国サウジは2日、国内でのテロに関与したなどとしてシーア派の有力な宗教指導者ニムル師ら47人を処刑した。シーア派国家のイランは激しく反発。イランの最高指導者ハメネイ師は3日、処刑について「政治的な過ちだ」と非難し、サウジに対し「神の報復を受けるだろう」と表明していた。
テヘランのサウジ大使館では処刑に抗議するデモが発生、群衆の一部が暴徒化して乱入したり、火炎瓶を投げつけたりした。イラン北東部のマシャドのサウジ領事館前にも抗議する群衆が集まり、治安部隊と衝突した。
ジュベイル外相は3日の記者会見で、イランがサウジの安全を脅かすことは許さないと強調した。イランのアブドラヒアン外務次官は、サウジが断交で「大きな過ち」を覆い隠すことはできないと批判。抗議行動で危害を加えられたサウジ外交官はいないと述べた。イラン駐在のサウジ外交官は、既にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに避難した。