ドローンで撮影した阿蘇大橋周辺。手前の道路が土砂で埋まり、橋が落ちている様子が見える=国土地理院提供
熊本地震では国土交通省のまとめで17日までに阿蘇山周辺など計57カ所で土砂災害が確認された。16日未明の本震がマグニチュード(M)7・3と規模が大きく、崩れやすい地質だったことが原因とみられる。専門家は二次的な災害の可能性を指摘している。
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本震で崩壊した熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋。現場付近を17日調査した新潟大災害・復興科学研究所の福岡浩教授(地すべり学)によると、大橋が崩落した谷に近づくと亀裂が目立つ。今後の雨や地震で、亀裂の入った場所からさらに崩れていく可能性があるという。
一帯の地層には火山灰などの火山噴出物が多い。京都大防災研究所の竹林洋史准教授(河川工学)によると、表層が薄く幅広く崩れているのが特徴で、2013年の伊豆大島の土砂災害に似ているという。
周辺では今月7日に100ミリ以上の雨が降った。同研究所の千木良雅弘教授(応用地質学)は「水を多く含んだ地面が揺すられて崩れたのではないか。16日から17日にかけて崩れた部分にさらに雨が降ったので、今後の余震で被害が拡大しないか心配だ」と話す。
同研究所の釜井俊孝教授(応用地質学)が国土地理院による空中からの映像を見たところ、火山灰だけでなく、深い溶岩層が崩壊した直径数メートルの溶岩もあった。映像では、溶岩が空気に触れてできた赤茶けた部分も見えたという。崩壊が大規模になった原因に、斜面が急だったことや、地震を起こした活断層がすぐ近くだったことなどを挙げる。
防災科学技術研究所の井口隆研究参事(応用地質学)は「道路などの復旧作業をする際、(亀裂や崩れが止まっている場所を)地図上に示して注意しないと二次災害の恐れが出てくる」と警告する。
さらに長期的には洪水への警戒も必要だ。阿蘇大橋周辺では、崩れた大量の土砂が川に流れ込んでいる。竹林さんは「流れ込んだ土砂が下流に運ばれてたまっていくと、夏季に雨量が増えた際、洪水が起きやすくなる」と指摘する。