昨年7月に亡くなったリチャード・テイラーさんを追悼する講演=21日、ブダペスト
■認知症の国際会議・取材日記@ブダペスト
介護とわたしたち
特集:認知症社会
開会式は、現地時間の21日午後5時半から始まりました。コンサートホールにも使われるという扇形の会場に、登壇者の声が力強く響きました。
まずあいさつに立ったのは、会議を主催する国際アルツハイマー協会(ADI)のチェアマンを務める、グレン・リーさん。「この会議を、認知症に関わる人同士の関係を豊かにする機会にしてほしい」と呼びかけ、聴衆は大きな拍手で応えていました。
この日、特に印象に残ったのは、自らも認知症患者でありながら、認知症患者たちをつなげる国際組織の立ち上げに携わリ、昨年7月に亡くなったリチャード・テイラーさんを追悼する講演でした。
登壇者の男性も認知症を患っているそうです。男性は、講演を手伝おうとした人を丁寧に断り、自分で手元に用意した原稿を指でなぞりながら、リチャードさんについて話しました。
講演の中で、リチャードさんの生前の映像が紹介されました。「(認知症を患ったことで)今日の自分は昨日の自分とは違うかも知れない。だが(認知症を含めた)全てが私自身なんだ」と。ありのまま、認知症であることを受け止めてほしいというメッセージでした。少し低い声と柔らかな口調でした。
ビデオが終わり、文字で映されたメッセージは「認知症ではなく、人を見て」。残されたリチャードさんの言葉のひとつひとつが、胸に残りました。(浜田知宏)