うつ病などで自殺した妊産婦が東京23区で10年間63人いたことが、順天堂大と東京都の調査でわかった。これまで把握されていた妊産婦の死亡事例の1・5倍という。専門家は「うつ病になったことがある妊婦らの精神的なケアをできる態勢が必要」と話している。
日本産科婦人科学会で発表された。
調査は2005年から14年に実施。妊娠中から産後1年までに自殺や交通事故などで突然死した人は89人だった。うち、妊娠中に自殺した23人では妊娠2カ月が最も多く、全体の約4割がうつ病などと診断されていた。産後に自殺した40人では4カ月後がピークで、全体の約6割がうつ病などと診断され、そのうち約半数は産後うつだった。
これまでの23区のデータでは、お産に伴う出血などで亡くなる妊産婦の死亡は出生数10万人あたり約4人だったが、自殺についてはきちんと把握されていなかった。今回の調査では出生数10万人あたり約6人が自殺していることになり、これまで把握されてきた妊産婦の死亡数の1・5倍が自殺で亡くなっているとみられるという。
10万人あたりの妊産婦の自殺は、イギリスでは2・3人、スウェーデンでは3・7人という報告があり、日本は大幅に多い可能性がある。調査した順天堂大の竹田省教授は「全国的な調査が必要だ。妊娠中や周産期のメンタルヘルス対策を充実させることが重要になる」と話している。(合田禄)