デンソーウェーブの柵木充彦社長=吉本美奈子撮影
機械の「腕」が将棋の駒をつかみ、ひっくり返す。遊び心と技術力で、新たな事業を切り開く。
ソフト、心理揺さぶる妙手 将棋第1期電王戦二番勝負
■デンソーウェーブ社長・柵木充彦さんに聞く
――コンピューターとプロ棋士の対局「電王戦」でロボットアームが登場し、話題を呼びました。
「コンピューターが指示した手を将棋盤で再現する『代指し』役として、うちのロボットアームが使われた。4月の対局で3代目だが、大きな進化を遂げている。2014年の初参加の時は、工場で電子部品の組み立てなどに使う産業用ロボットの改良版が、アームの先端についた吸引装置で駒を吸い上げて動かした。昨年の2代目は医療用ロボットがベースで、駒をつかめるようになった」
■「成り」も高速化
――最新型の特徴は?
「棋士の気が散らないように駒をつかむ時の音を静かにし、駒の『成り』も高速化した。この成りが難しく、一連の動作でスムーズにできるようにするため、改良を重ねた」
――冗談まじりに「また技術を無駄づかいした」などという声も出ています。なぜ将棋ロボに力を入れるのですか。
「確かに本業ではないし、汎用(はんよう)性もないが、ニーズに対し工夫を積み重ねることが、ロボットの可能性を広げることになる。実際、現場では思いも寄らない使われ方がされている。レストランの布ナプキンを大量にたたんだり、アームにハサミを取り付けて布地の形を整えたり。ノルウェーの工場ではサーモンの皮をはぐのに使われていた。使い方は使う人次第だ」