国税当局が指摘した資金の流れ
陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)の土地を国に貸し、賃貸料を得ている一般社団法人「須走彰徳(すばしりしょうとく)山林会」(同県小山町)と関連法人が名古屋、東京両国税局の税務調査を受け、2015年3月期までの3年間で計約3億2千万円の所得隠しを指摘されたことがわかった。2法人は、架空経費を計上するなどしていたという。追徴税額は重加算税を含めて計約1億円とみられる。
須走彰徳山林会は、戦前から演習場内の土地などを農耕用などで共用していた地元の世帯約80人の会員で構成される。10年度末の同会の財産目録などによると、土地約480ヘクタールを防衛省に貸し、年間約6億7千万円の収入を得ている。
関係者によると、同会は会員に贈る創立記念品代や会員宅にある通信機器の維持管理費などの架空経費を計上し、実際は会員に現金を振り込んでいたという。
また、同会理事らが出資した関連法人「(株)クリーン・サポート」(山梨県山中湖村)は、同会から受託した山林整備などの業務を会員に発注していたが、作業日数を水増しするなどして過大な日当を支払い、経費として計上していたという。税務当局は、いずれも同会に入った資金を会員に流すためだったとみている模様だ。
一方、会員はクリーン社からの日当などを「給与所得」として申告していたが、当局は過大に支払われた分などを「雑所得」と認定。給与のうち一定額を経費とみなして差し引くことができる給与所得控除の適用を認めなかった。会員約80人に14年までの3年間で計約8千万円の申告漏れが見つかり、計約3千万円を追徴したとみられる。
同会の高村繁男前理事長は朝日新聞の取材に「見解の相違はあったが、修正して納税した」と話した。