5月15日に札幌ドームであった西武戦で力投した日本ハムの谷元=白井伸洋撮影
■スコアの余白
DeNA戦を前に、新潟へ移動するときだった。チーム本隊が乗る飛行機のチケットが取れなかったので、1本早い便にした。そこに、8年目のリリーフ投手、谷元圭介(31)も乗ってきた。北海道土産では定番のお菓子の、大きな紙袋を持って。
スコアの余白2016
谷元が、お土産をたくさん持って、一足早く新潟へ……。思い出した。谷元はプロ入り前、医薬品卸会社のバイタルネットに勤めていた。野球部の拠点は確か、新潟だ。次の日の試合前にたずねると、「そうです。会社に行ってきました。2年間、お世話になったので」。
社会人野球の強豪になると、シーズン中は野球一色だが、谷元の会社は違った。7時半に出社し、17時まで仕事。「平日は週に1日、半日練習ができるんですが、その時間を確保するために出社が早いんです」。倉庫に勤務し、納品や販売管理を担当していた。
仕事が休みでも練習はある。専用球場がなかったので、県内各地のグラウンドを転々とした。「今週は巻、来週は村上って感じで。きつかったけど、あの2年があるから今、野球で生活できている。会社には感謝しかないです」
2年目のとき、日本ハムが新潟で試合する機会があった。当時は2軍。「その2日後に1軍へ合流したんですよ」。だから今回は、どうしても投げたかった。しかし、出番が来るとは限らないのがリリーフ投手。この日は先発の有原が完封したため、谷元がマウンドに上がることはなかった。
「走者を置いた場面で出す投手は、絶対に谷元。だって度胸があるもん」と栗山監督からの信頼は絶大だ。プロで大きく成長した身長167センチの右腕に、第二の故郷で錦を飾ってほしい。来年、新潟で試合がありますようにと、願わずにはいられなかった。(山下弘展)