日曜市で商店主と握手する候補者=高知市内
今回の参院選では一票の格差是正のため、隣り合う2県を1選挙区とする「合区(ごうく)」が誕生した。前例のない選挙戦で、候補者はどんな動きを見せているのか。
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車で地球1周分以上。
徳島・高知選挙区(改選数1)に立候補した無所属新顔の大西聡氏が、今年2月から公示日の6月22日までに移動した距離だ。秘書によると、出身県の徳島と高知を30回以上往復し、4万6千キロを突破した。
「徳島県鳴門市から海岸線経由で、高知県土佐清水市までは350キロで、東京から伊勢湾まで行ける」。自民現職の中西祐介氏も合区の広さをこうたとえる。6月開かれた徳島市での公開討論会では「徳島・高知選挙区は、東京、神奈川、静岡の3都県を合わせたのとほぼ同じ面積。なのに(改選数は)3都県で12人いる」と訴えた。
両陣営とも冊子やビラに工夫を凝らす。中西氏は、徳島版には徳島県を見渡す空撮写真、高知版には観光地の桂浜を望む写真を掲載。大西氏は高知用には坂本龍馬ばりに腕組みした姿を掲載。徳島用では腕組みしなかった。両陣営とも選挙区名を、徳島では「徳島・高知」、高知では「高知・徳島」と表記する。
鳥取・島根選挙区(改選数1)に立候補する自民現職の青木一彦氏は6年前、島根選挙区で初当選。「参院のドン」と呼ばれた父、幹雄氏の地盤を引き継いだ。
だが、「鳥取ではまず名前を覚えてもらうという、未知の戦い」(自民島根県連の竹下亘会長)。事務所は島根県の松江、益田市だけだったが、鳥取県の鳥取、倉吉、米子の3市にも置くようにした。「山陰に残る、互いに支え合う地域社会を守っていきたい」と「山陰代表」を強調する。
野党統一候補の無所属新顔、福島浩彦氏は、鳥取、島根ともなるべく均等に回る戦略で、街頭演説を1日30カ所ほどこなす。「東京からではなくて、大阪からでもなくて、鳥取から、島根から、山陰から、変えていこう」と呼びかける。
二つの合区では、いずれの候補者も「合区反対」で一致する。衆院鳥取1区選出の石破茂・地方創生相も6月28日の記者会見で強調した。「(合区は)候補者にとって、ものすごく負担。むちゃくちゃ広い選挙区で、候補者が有権者に訴えることができないのは、あんまり正しいものだと思いません」