あさのあつこさん=美作市栄町
■児童文学「バッテリー」の作者 あさのあつこさん
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「何があっても諦めない」「覚悟を持って努力してきた」「さわやかな笑顔と全力疾走を最後まで」――。59チームが出場する第98回全国高校野球選手権岡山大会(県高校野球連盟、朝日新聞主催)が開幕した。熱い思いを貫き、ひたむきに野球と向き合ってきた球児たちの「夏」が始まる。
バッテリーの関係って面白いなあ、と思って野球を見ていました。集団スポーツなのに、投手と捕手の1対1の関係がある。投手のできが試合の勝敗を左右する。やりがい、孤独……。投手の心の内にひかれました。
10代の物語を描こうと思ったとき、主人公の輪郭をくっきりとさせるために、天才的な才能を与えることにしました。それが「バッテリー」の投手、巧(たくみ)です。
重圧の中、力を発揮できず、降板させられても、もう一度、マウンドに戻る、立ち続ける。それができるのが投手。バッテリーを描き終えたとき、分かった気がしました。
野球は、自分を装うことを許さないスポーツです。試合では、余裕をはぎ取られる。自分をさらけ出せないと勝つことなんてできません。
野球のためだけに、すべてを費やすことができるのは、高校3年間しかありません。本当に好きなことなのか、やりたいことなのか。それを考え、与えられた問いに、自分で答えを出してほしいと思います。
これは、作品を描くことと同じです。描きたい、という強い気持ちがないと作品はつくれません。
毎年、夏の甲子園を楽しみにしています。負けたら次はないのが高校野球。明日をもぎとってやる――。岡山の球児たちに、最後まであきらめない野球を見せてもらいたいと思います。
自分たちの野球を貫いて臨んでください。(聞き手・村上友里)
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1954年、岡山県美作市生まれ。青山学院大文学部卒業。小学校教員を経て、91年に作家デビュー。野球少年の心理を描いた代表作「バッテリー」(角川文庫)は映画、テレビドラマ化され、今月からテレビアニメ(フジ系)が始まる。岡山放送では24日から毎週日曜深夜に放映される。