自身がデザインしたブラウスを手にする岡田友梨さん。ブラウスは透け感のある素材で肩や腕の周りにゆとりを持たせている
「おしゃれをしたいけど、ごつい体に合う服がない。ならば、自分で作ればいい」。女子レスリング元日本代表の岡田友梨さん(32)が女性アスリート向けの洋服ブランドを立ち上げた。体形の悩みをカバーする洋服は、メダル量産を期待されるリオデジャネイロ五輪の女子レスリング代表にも好評だ。
リオオリンピック2016
「めっちゃ細く見える」。細身の黒いズボンを試着した48キロ級の登坂絵莉(東新住建)は興奮気味に話した。69キロ級の土性沙羅(至学館大)は試着してすぐにズボンを購入した。63キロ級から75キロ級に階級を上げて五輪切符をつかんだ渡利璃穏(アイシンAW)は、3カ月で10キロ以上も増量。Tシャツは首や腕の周りがパツパツに。「伸びない生地のシャツは腕を上げられません」
女子レスリングのトップ選手は、2人の人間を背負って坂道を駆け上がり、天井からつるされたロープを足を使わずに上り下りできる筋力の持ち主だ。鍛え上げられた筋肉は努力の証しだが、着飾って出かける時には悩みの種へと変わる。
岡田さんは強豪の中京女大(現・至学館大)の出身。2009年世界選手権の女子51キロ級で銅メダルに輝いた。12年ロンドン五輪を目指していたが、元々はおしゃれが大好き。「女性アスリートのための服を作りたい。私にしかできないのはこれだ」と、11年7月の全日本合宿中に引退を宣言し、アパレルで販売をしながら、ファッションの専門学校に通った。
レスリング、柔道、水泳、サッカーなど女性アスリート150人にアンケートをとり、体形の悩みを聞いた。「太ももを通過してくれるズボンはウエストが緩い」「肩幅に合わせると袖が長いし、胴回りはぶかぶか」。競技は違えど、悩みは共通していた。
力こぶや首回り、太ももなど160人以上の女性アスリートの体形のデータも集め、体にストレスをかけずにスタイルをよく見せるデザインを追求した。昨年10月に洋服ブランド「KINGLILY(キングリリー)」を設立。今年4月からインターネット販売を始めた。ブラウスやズボンなど8種類を扱う。すべて日本製だ。
登坂や土性が絶賛した「スーパーストレッチ美脚スキニーパンツ」(税抜き1万3500円)は太ももやお尻に引っかからずにはけるよう、ジッパーを一般的なものより2センチ長くして、広がるようにした。緩くなりがちなウエストは、背面部分をゴムにするなど工夫を凝らした。
ブラウスやカットソーは肩周りに余裕を持たせたほか、あえて透け感のある素材を選び、引き締まったウエストのラインが際立つようにした。SNSを通じて徐々に情報が広まり、毎週のように試着会を開くまでになった。岡田さんは「女性アスリートには、強いだけじゃなく、きれいでステキだなと憧れられる存在になってほしい」と願う。商品の詳細はホームページ(
http://kinglily-shop.com/
)へ。(金島淑華)