当選を決め、支持者の前で両手をあげる小池百合子氏=31日午後8時24分、東京都豊島区、遠藤啓生撮影
新しい首都の顔に小池百合子氏(64)が選ばれた。政党の推薦を受けない選挙の中で掲げたのは「東京大改革」。2020年東京五輪・パラリンピックの費用問題や、都議会の透明化に向き合う構えだ。選挙で相対した政権与党は、小池氏との距離をどう取るか模索する。
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「予算額が膨らんでいった。不透明なところを解決していきたい」。東京・池袋の選挙事務所で小池氏は、東京五輪の費用問題について検証に乗り出す考えを明らかにした。
20年五輪の開催費用は当初は約7千億円とされたが、見積もりの甘さや資材高騰で「2兆円を超える」(五輪組織委員会の森喜朗会長)、「3兆円は必要だろう」(舛添要一前都知事)。招致計画で「新国立競技場は国、仮設は組織委、恒久施設は都」とされたが、舛添知事時代に新国立競技場整備で都は448億円の負担を強いられた。
「積算根拠を出していただき、都民の負担を明らかにしたい。都民のための都政を取り戻すため、五輪の予算負担は試金石になる」。小池氏は踏み込んだ。
安倍政権にとって五輪開催は都知事との連携が欠かせず、小池氏との距離感が課題だ。財政難の国はなるべく都に負担を求める考えだが、舛添氏と違って組織委の森会長と疎遠で、話し合いは難しくなりそうだ。
ただ、早くから小池氏の優勢が伝えられる中、官邸には小池氏との全面対決を避ける配慮もみえた。選挙中、安倍晋三首相は増田寛也氏(64)の応援のビデオメッセージを作ったが、7月29日、自民党東京都連の石原伸晃会長から都知事選最終日の30日に増田氏の応援演説に来るよう頼まれても、応じなかった。
首相周辺は語る。「首相は一度も小池氏の批判をしていない。このメッセージは十分伝わっているだろう。選挙が終わったら、五輪を失敗させないため一丸となって頑張ろうと。それが政治ってものだ」
対決姿勢を示してきた都議会との関係については、小池氏は「改革を進めなければならない。議会でも議論いただければ」と述べた。
選挙中、ガラス張りの選挙カーで「透明化」を訴えた小池氏。「都議会を冒頭解散したい」。7月6日の立候補表明会見で打ち出した。冒頭解散は議会の知事不信任案提出がないとできず、実現性が薄いという声があがると、税金の使途透明化を訴えて回った。
舛添前都知事の政治とカネの問題で始まった都知事選。都議の高額海外出張や月60万円の政務活動費に有権者の厳しい視線が向けられるなか、都議会批判を繰り返した。背景には自民とのしこりもあった。小池氏は立候補表明後、自民党都連に推薦を依頼したが、都連はしばらく保留したうえで、増田氏を擁立した。
その対決を制した小池氏。「都民のためになる政策のために連携を取りたい」。自民側の対応次第で、関係改善を進める考えを示した。来夏の都議選に向けて「小池新党」の立ち上げも取りざたされていたが、「新党の計画は現時点でない」と否定した。
一方、5日のリオ五輪開会式への出席は「見合わせたい」と述べた。「時間も迫っており数々の問題に取り組んでいきたい」。知事の海外出張のあり方が問われるなか、税金の支出について慎重に考える姿勢がうかがえる。
自民都議は「まずは様子見」と言う。ある都議は「(小池氏の政策に)賛成か反対かと踏み絵を迫られると厳しい。知事への抵抗勢力とレッテルを貼られると都議選への影響もある」と戦々恐々だ。別の都議は「互いに歩み寄る」と冷静だ。1999年都知事選で自民候補を破った石原慎太郎氏とは、しばらくして関係が改善した。「年明けの予算案審議ぐらいが着地点」とみる。