市和歌山の木下康司=内田光撮影
(15日、高校野球 日南学園6―4市和歌山)
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■市和歌山・木下康司選手
帽子のつばに甲子園を思い描いて書いた「夢」。その憧れの場で、1回戦は1安打1打点。この日はライトとセンター前にヒット。「負けたけど、最高っす。あー楽しかった」
かき集めた聖地の土は、学校から自転車で25分のところに住む須江子おばあちゃんに手渡すつもりだ。入学当初は30キロ以上離れた自宅から1時間15分かけて通っていた。毎日帰宅は午前0時過ぎ。朝は4時半起き。2カ月できつくなって、おばあちゃんの家に下宿した。
泥だらけのユニホームを持ち帰る。「汚れてらいしょ(汚れているね)」と言いながら、次の日には真っ白にして部屋に戻してくれた。午後10時すぎに帰っても、必ず夕食を作って起きて待っていてくれた。チーズ入りハンバーグに納豆、もずく。長芋にみそ汁。栄養満点で体重は最大で9キロ増えた。
元々、メリハリをつけた練習が大切と思う主義だ。おばあちゃんの家に住むようになって練習に集中でき、春夏連続、チームの主力として夢の舞台にたどり着いた。おばあちゃんは何も言わないけれど、冷蔵庫の横の壁に新聞の切り抜きを張っている。喜んでくれていたみたいだ。
おばあちゃんは足が悪いから甲子園には来られなかった。夏の甲子園は、いろんなにおいがする。香水に焼き鳥にから揚げ……。トンボもやたら多い。土産話を持って、胸を張って帰ろうと思う。(藤田絢子)