試合前練習をする嘉手納の新垣選手=伊藤進之介撮影
(16日、高校野球 明徳義塾13―5嘉手納)
動画もニュースも「バーチャル高校野球」
■嘉手納・新垣海舟選手
夢のような時間だった。八回、6連打でチームが反撃。アルプス席からの手拍子が一塁コーチの僕の背中に響く。涙があふれた。
小3で野球を始めたが、一度もレギュラーになったことがない。中学までバットを振っても当たらず、内野の守備ではポロポロとボールをこぼした。
高校でやめようと思ったこともあった。167センチと体が大きくならず、パワー不足に悩んだ。でも負けず嫌いで、誰よりも練習した。ただ、甲子園はエリートが集まる場所。自分が立つことを想像したことはなかった。だから、いまこの場にいるのは奇跡のよう。支えてくれたみんなに「ありがとう」を言いたい。
まずはキャプテンの(大石)哲汰(てった)。新チームが出来てから「一緒に朝練やろう」と誘ってくれた。僕の背中を押して6時半にグラウンドに行き、2人でトスバッティングとノックを繰り返した。「あいつ成長してます」。僕の努力を監督にアピールもしてくれた。
そして父と母。メンバー入りできずに落ち込んでいる時に、素振り用のバットを買って応援してくれた。5月末、「夏は入れるみたいだぞ」と哲汰が僕と両親にこっそり教えてくれた。71人の部員の中で勝ち取った背番号。みんな僕以上に喜んでくれた。照れくさかったけど、うれしかった。
大学では人生初のレギュラーを目指す。努力すれば何でも出来る。甲子園がそう教えてくれたから。(岩佐友)