約10年後、全国の地方銀行の6割は貸し出しや投資信託の販売などの「本業」で赤字に転落する、という試算を金融庁がまとめた。人口減や日本銀行のマイナス金利政策による厳しい経営環境を浮き彫りにした内容だ。金融庁は、経営統合を含めた持続可能な経営手法を早期に検討するように求めている。
同庁が全国の地銀106行の収益見通しを試算した。人口予測から貸し出しと預金の動向を推計。働く人が減り、貸し出しが徐々に減るなかで、貸出金利から預金金利や経費を引いた「利ざや」が縮小。9年後の2025年3月期で赤字の地銀は6割を超えるとみている。15年3月期は4割が赤字だった。
地銀は現在、本業の収益悪化を国債や株式の売却益などで補って高水準の利益を上げており、すぐには経営不安にはつながらない。ただ、マイナス金利政策で貸出金利の低下は続いている。金融庁は地元の中小企業への積極的な融資や経営支援を強化して利ざやの低下を食い止めるなど、持続的な経営手法を確立するように求めている。「このままでは地銀の経営は成り立たず、再編も選択肢だ」(幹部)としている。
試算は同庁が毎年まとめる金融業界に関するリポートに盛り込まれ、15日公表される。昨年は同様の試算はなかった。今回は地域金融機関の収益力を詳しく分析するために試算した。(長崎潤一郎)