神戸製鋼所がアルミ製品などの品質データを改ざんしていた問題で、東京地検と警視庁が合同で捜査を始めたことがわかった。不正競争防止法違反容疑などの適用を検討しているとみられ、今後、同社関係者などから事情を聴き、不正の解明を目指す。
この問題では、米司法省が昨年、神戸製鋼所に関係書類の提出を要求したほか、欧州航空安全局も同社製の部材の安全確認を航空会社や航空機メーカーに求めた。米国とカナダでは損害賠償請求訴訟も起きている。東京地検と警視庁は改ざん行為の影響を重く見て、捜査による実態解明が必要だと判断したとみられる。
神鋼が今年3月に公表した調査報告書によると、強度などの品質データ改ざんは1970年代から続き、国内外23工場でアルミや銅製品などを対象に行われた。対象製品は自動車や新幹線、航空機にも使われ、2016年以降の1年間だけで国外を含む延べ688社に出荷された。元役員ら幹部四十数人が、顧客との契約を満たす目的などで、改ざんを指示するなど不正に関与していたという。
一部の工場では製品検査結果を改ざんして出荷する行為を「トクサイ(特別採用)」と呼称。日本工業規格(JIS)が求める検査を実施していないのに、JISマークを表示して出荷したケースもあったという。神鋼は「製品の安全性の検証はおおむね完了している」としている。
不正競争防止法は、商品やサービスの提供で、不正な目的を持って提供先を勘違いさせるか、虚偽の表示をした場合、刑事罰を科すことができると定める。これまで、東洋ゴム工業(兵庫県伊丹市)の免震ゴム性能データ偽装事件などに適用された。違反者個人には5年以下の懲役か500万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が定められている。
神鋼は25日、「捜査が進行中で、コメントは控える。捜査に真摯(しんし)に協力していく」としている。