政府税制調査会が23日開かれ、財務省が所得税の負担を軽くする「控除」の見直しの試算を示した。高所得者ほど税負担が軽くなる今のしくみを改め、高所得者の税負担を重くする代わりに中・低所得者の税金を減らす内容。年末にまとめる来年度の与党税制改正大綱への明記をめざすが、負担が増える層の反発が予想され、ハードルは高い。
試算は、所得税の控除の仕方を「所得控除」から「税額控除」に変えるという内容。いまの所得控除では、収入から一定額を差し引いた後に税率をかけて納税額を計算するため、高い税率が適用される高所得者ほど減税効果が大きい。税額控除は所得の多い少ないに関係なく、一定の税額を引くため、所得が低い人ほど控除の恩恵が大きい。
試算によると、全体の税収が減らない前提で、収入から年38万円を差し引く「基礎控除」を税額控除方式に変更した場合、所得税は一人一律で年3・6万円安くなる。
たとえば、所得税率が5%の年収300万円の人は、いまの制度では年1・9万円の減税が受けられるが、税額控除方式にすると、さらに年1・7万円負担が軽くなる計算だ。一方で、税率が20%の年収800万円の人は年4万円、税率が最も高い45%の年収4千万円超の人は13・5万円の負担増になる。
政府税調の中里実会長は会合後の記者会見で、所得税改革について「中間層がはがれ落ちていくのをどう防ぐかは、世界的な税制改革の課題だ」と強調。会合では、資産家も同様に受けられる「公的年金控除」や、会社員の恩恵が大きい「給与所得控除」の見直しを求める意見も相次いだ。
しかし、一部の人が増税になる所得税改革には、与党内でも反対論が根強い。自民党税制調査会の宮沢洋一会長も9月のインタビューで「政治的には相当注意が必要」と述べた。財務省からも「国民に理解が広がっていない」(幹部)との意見が出ており、実現は見通せていない。(長崎潤一郎)