IRの経済効果に関する主な試算
カジノ設置を可能にする統合型リゾート(IR)実施法案。与党側は衆院内閣委員会で6日にも採決する構えで、投資や雇用といった経済効果を訴えるが、政府による試算はなく、各団体の試算は数字も根拠もバラバラだ。法案は国際競争力の高い滞在型観光を目指すとしつつ、誘致自治体は、客の7~8割は日本人になると想定している。
「観光や地域振興、雇用創出といった大きな効果が見込まれる」「世界中から観光客を集める」。安倍晋三首相は1日の衆院内閣委で、IRの意義をこう説明した。
では具体的な経済効果はどのようなものか。IR推進会議で政府側が示した資料によると、IRの建設で一時的に投資や資材の生産などの効果がある。さらに、運営によって雇用が生まれたり、客がカジノやホテルで金を使ったりする効果が毎年続く。
ただ、政府は具体的な数字を伴う試算を出していない。「立地や事業者のビジネスモデルなど、不確定要素が多いから」(政府のIR推進本部)だという。推進会議には、経済団体やシンクタンクによる試算を例示した。
大和総研は、2010年にIR内にカジノを開業したシンガポールを参考に、北海道、横浜、大阪の計3カ所にIRを作ると仮定。全国への経済効果は、建設に関わる約5兆円のほか、運営に伴って毎年約2兆円と試算した。みずほ総研もシンガポールを参考に、東京に1カ所作ると仮定。建設で約0・8兆円、運営で約2・9兆円と試算したが、経済効果の及ぶ範囲を関東に限定するなどした。日本経済団体連合会は他団体の試算を引用し、建設で約9300億円、運営で約5800億円と見込んだ。
数字にばらつきがあるのは、試算時期や想定する設置場所、規模などが異なるためだ。日本人客への入場回数制限や入場料(6千円)、マイナンバーによる本人確認などの影響は考慮していない。
一方、誘致自治体は集客数まで試算したが、日本人客が大半と見込む。
大阪府は昨年、大阪市の夢洲(ゆめしま)地区にIRを設置した場合、建設で最大約1・3兆円、運営で毎年約6300億円の経済効果があると試算。さらに、シンガポールへの観光客がIRを訪れた率から、国内外から夢洲地区のIRに最大約2200万人が訪れ、うち日本人客は約7割(約1500万人)とはじき出した。
北海道も、苫小牧市にIRを設…