北海道庁が公開した文書に例示された家系図
かつての優生保護法のもと、障害者らに不妊手術が強制された問題で、北海道庁が1950年代、保健所に対し「(対象者は)4代にわたって調査されたい」とする文書を送付していたことがわかった。「性格」などを調べるよう求めたり、対象者の近所での聞き込みを促したりもしており、道庁の手術への積極姿勢が、全国最多の手術数につながったとみられる。
文書は道庁が保健所長に宛てた「優生手術にかかる遺伝調査要領について」(52年9月15日)。朝日新聞が情報公開請求し、道が開示した。強制不妊手術の判断に必要な「遺伝調査」の手順を詳述し、対象者の「4親等」までの全家族について、「性格について」「身体状況」「知能について」の3項目を調べるよう求めている。
それぞれについて記入例もあった。性格についての項目では「幼時は内気であった」「性格異常が疑われる」「精神に異常を認める」、知能では「在学中に級長、首席で通した」などと広範囲に及んで例示されていた。
また「芸能方面に興味を持っている」「意志薄弱である」「うそを平気でいう」「勉強を嫌う傾向」などとも記され、遺伝性疾患とおおよそ関係ない内容を調べていたことがわかる。「(隣人などへの)聞き込み等の調査も必要」との記載もあった。
強制不妊手術を受けさせられたのは全国で少なくとも1万6475人。うち北海道は2593人と、都道府県別で最多だった。(田之畑仁、伊沢健司)
「遺伝調査要領」に例示された回答例
(1)性格について
・幼時は内気であったが、(年を経るに従いまたは結婚後または○○の衝撃により)その性格が変わり気ままとなった
・性格異常でないかと思われる(前科○犯である、遊蕩(ゆうとう)癖がある、誇大的である、怨恨(えんこん)心が人一倍強い、盗癖がある)
・虚栄的なところが人一倍強い(うそを平気でいう)
・意志薄弱である(けんかをする、職を転々とする、向上心がない、迷信に頼る)
・精神に異常を認める(○才時○ケ月入院、専門医の外来診察をうけたことがある、現在○○病院入院中)
・特殊な性格を(頑固)有する
・自殺者、自殺企図者
(2)身体状況
・幼時、熱病(○○○○)を患った
・○才時頭部に大けがをし、出血多量のことがあった
・生まれつき身体が(非常に)弱い
・母親が難産のため、正常な発育でなかった
・○才時「ひきつけ」を一日○回も起こしたことがある
・親は血族結婚である(身体的奇形を有する)
・在学中はスポーツの選手をしたが、その後結核を患い、精神的な衝撃をうけた
・時々「癪(しゃく)」を起こし、床につくことがある
・身体の発育が悪く、知能程度も低い
(3)知能について
・小学校を漸(ようや)く卒業させた程度である
・芸能方面に興味を持っている
・勉強を嫌う向きがある(勉強をしすぎたために、異常を起こしたのではないかと思われる)
・在学中は級長、首席で通し、知能程度も優秀である
・○○○○については秀才的な面がある