ラクダに乗り、歓声に応える大道行雄さん=大道さん提供
兵庫県加西市職員の大道行雄さん(34)は、今月4日に開かれた「第20回モンゴル国際草原マラソン」で優勝した。種目は最長の100キロ。9時間57分かけてゴールすると、目の前に待っていたのは賞品のラクダ。勝者をたたえる、モンゴル流のおもてなしだった。
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ウランバートル近郊の大草原を駆け抜ける100キロに、大道さんを含め日本の男性ランナー5人が挑戦した。夜明けのスタート時、気温は5度まで下がり、風の強さも気になったという。
草原が360度広がる大自然は、驚きの連続だった。馬やヒツジが群れる光景は雄大で、大道さんは「空気のおいしさを満喫した」と振り返る。ただ、土の道は穴ぼこだらけ。レースの大敵は、野ネズミの仕業とされる。また、給水ポイントの少なさにも悩まされたという。
驚きは表彰式でも続いた。ラクダの名付け親にされ、「Go(ゴー)」と決めると、間髪入れずに「Go」のこぶとこぶの間に乗せられた。「勝利のウィニングラン」を求められ、取り囲んだ観衆から喝采が沸き上がった。
在大阪モンゴル国総領事館によると、モンゴルでは家畜のプレゼントは尊敬と親愛のしるしという。ラクダは何日も水を飲まなくても砂漠を旅するとされ、優勝賞品に最適として選ばれたのでは、とみる。
一方、「Go」の日本への道は閉ざされている。口蹄疫(こうていえき)の予防対策でモンゴルからの家畜の輸入が禁止されているからだ。
大道さんによると、遊牧民に「Go」の世話を頼んで帰国した。別れ際、「毎年、会いに来て」と言われたという。
大道さんのランナー歴は8年。「自分の限界に挑み、苦しさやしんどさを乗り越えた後、達成感に満たされる。体にしみるビールの味は格別」とウルトラマラソンにのめり込んだ。
今回の100キロマラソンは大会の20回記念として設けられ、大道さんは初代王者になる。帰国後、職場の同僚らは「モンゴルのマラソン史に名前を刻んだ」と国際的ヒーローの誕生を祝福した。(広川始)