鷲田清一さん=大阪市内
朝日新聞の朝刊1面でコラム「折々のことば」を連載している哲学者の鷲田清一さん(京都市立芸術大学学長)は、地方創生が叫ばれる中、「『地方(ちほう)』ではなく『地方(じかた)』の創生が必要」と考えている。その真意とはなんだろうか。
鷲田清一「折々のことば」
「折々のことば」ぐっと引いて、時に熱く 鷲田清一さん
鷲田さんは9月中旬、自身が副理事長を務めるサントリー文化財団が主催した報道関係者向け講演会で語った。その中で、地方(ちほう)と地方(じかた)について触れた。
地方(じかた)は江戸時代に農村を示す言葉として一般的に使われ、町方(まちかた)が対立語にあたる。
鷲田さんは「地方(じかた)は生産の場。百姓はその漢字から分かるように、米麦だけでなく野菜や蚕糸(さんし)、茶、油など様々なものをつくった。それらの生産物を流通の場だった町方で売り、逆に町人から建築資材や反物を買った。そんな循環社会が近代に入り大資本によって崩された。事業化がすすむことで百姓は米作に限定され、単業化された製糸業や製油業などが生まれた」と話す。
かつて民俗学者の柳田国男(1…