未明の爆発的噴火で大量に降った灰で包まれた市内=8日午前8時29分、熊本県阿蘇市、朝日新聞社ヘリから、森下東樹撮影
気象庁は、8日午前1時46分ごろに熊本県の阿蘇山の中岳第1火口で爆発的噴火が発生したと発表した。火口から1キロを超えて大きな噴石が飛ぶ恐れがあるとして、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。火山活動は不安定な状態が続いており、火口から約2キロの範囲で大きな噴石が飛ぶ可能性があるとして警戒を呼びかけている。
気象庁によると、中岳第1火口での爆発的噴火は1980年1月26日以来、36年ぶり。阿蘇山では昨年9月14日にも噴火がありレベル3へ引き上げられたが、11月24日にレベル2に引き下げられていた。
熊本県災害警戒本部によると、阿蘇市の国立阿蘇青少年交流の家で、約3センチの噴石により窓ガラスが1枚破損した。けが人の情報はないという。火山灰は阿蘇市などで降り、同市は小学校や公民館など12カ所に避難所を設置。午前9時の時点で4人が避難した。
遠望カメラでは噴煙は確認できなかったが、気象衛星で高さ1万1千メートルの噴煙を確認したため、気象庁は午前3時過ぎに降灰予報を発表。火口の北東側8キロにある阿蘇市一の宮町では降灰が確認された。7日午前10時ごろから火山性微動の振幅が大きくなり、火山ガス(二酸化硫黄)が非常に多い状態が続いていた。午後9時52分には、小規模な噴火が発生していた。
気象庁は、火山灰は火口から北東方向に流されるとみている。8日午前8時までに多いところで熊本、大分、山口、広島、岡山、兵庫、香川、愛媛、高知、徳島の各県で降灰があると予想している。
8日に気象庁で会見した斎藤誠火山課長は「噴煙1万メートルは非常に珍しい」と話した。火山性微動の振幅が大きくなったり小さくなったりと不安定な状態が続いており、「同程度の噴火が起きる可能性もある」と注意を促している。
降灰の影響で、熊本、大分両県を結ぶJR豊肥線で8日午前5時50分ごろ、列車を感知する機器に不具合が生じて宮地駅(熊本県阿蘇市)構内の信号が切り替わらなくなるトラブルが発生し、阿蘇―豊後竹田(大分県竹田市)間で始発から運転を見合わせた。また、人気観光地の草千里ケ浜に続く道路で、9月16日に通行止めが解除された熊本県の県道阿蘇吉田線が再び通行止めとなった。
九州電力によると、8日午前2時ごろ、熊本県阿蘇市、南阿蘇村、高森町、山都町で最大約2万9千戸が停電したが、午前3時50分には全面復旧した。電線や電柱への降灰で安全装置が働いて停電した可能性があるという。