広告大手の電通が、残業時間が長い新入社員の中に不適切な働き方を強いられている人がいる可能性があると、社員に対して文書で説明したことがわかった。女性新入社員(当時24)が昨年末に過労自殺し、労災認定された後も、別の若手社員に対して不適切な労務管理があった可能性を初めて認めたものだ。
朝日新聞が入手した社員向けの文書などによると、電通は自殺した新入社員が9月末に労災認定を受けた後、労使が合意すれば残業時間の上限を延ばせる36(サブロク)協定の「特別条項」を複数回適用されている社員と面談。その際、新入社員から不適切な勤務実態があるとの訴えがあったことを、10月25日の労働組合との団体交渉で明らかにした。
団交には労務担当の副社長が出席。会社側が不適切な勤務実態について言及し、「お会いした社員は数名であり、その当否を確認することはできませんが、その言葉を信じ、不適切な働き方を強いられている社員が存在すると認識した」と説明。「当該社員やご家族の心情を思うと本当に申し訳なく思っています」と謝罪した。関係者によると、「不適切な勤務記録がある」と労組が会社に指摘しても、これまで会社はその存在を認めてこなかったという。朝日新聞の取材に対し、ある現役社員は「上司から残業時間の申告を減らすよう指示を受けていた」と証言している。(大内奏)